口腔ケアは元気の秘 〜介護予防とお口のケア〜 ●歯みがきで認知症を防ぐ ●顔学でみる歯と顔のいい関係

口臭を気にしすぎる人が増えている。 ●ものをよくかまない若者たちが「キレる。」 ●200X年。宇宙旅行者のための基礎知識

「歯磨き習慣」に関する市場調査 ●古代エジプトにもあった・・・“歯磨き”と“歯磨き剤”の謎

 口腔ケアは元気の秘 〜介護予防とお口のケア〜
歯の健康を広く伝えるために年に一度開催されていス「歯の健康シンポジウム」。
2006年は、介護と口腔ケアの深い関わりをテーマに要介護者、高齢者の健康状態を改善し、将来の介護予防につながる口腔ケアの重要性について話し合われました。
その中からパネルディスカッションの内容をレポートします。

ロで食べることで生きる意欲が湧く!
 いつ当事者になるかわからないのが介護の問題。誰もが介護する側、される側、両方の可能性を持っています。今回のシンポジウムでは口を使って食べることの意義や、介護中の口腔ケアの役割について話し合われました。
 リハビリ看護の施設を主宰する田中靖代さんは、介護が必要な方でもできる限り、自分の口で食べられることをめざしています。「食べることは人間らしい生活行動の基本。寝たきりだった方も自分で食べられると、だんだん声が出て話ができて、笑顔になり、生活全般に意欲が生まれます。食べることで“その人らしさ”が出てくるんですよ」。
 食べることは口や頬、指先を動かし、姿勢を支える行為。そのため歌を歌う、字や絵を書く、花を生けるなど、直接食には関係ないように思える趣味の活動も、食べるための大切な訓練として大いに取り入れているそうです。「かむこと自体に満足感がある」と語るのは、医師としてリハビリ指導にあたる藤谷順子さん。「柔らかいものしか食べられない嚥下障害の患者さんによると、硬いものをかんで飲み下した時の喜びは大きいと。かめなくなって気づく喪失感があるんですね」。
 女優の安藤和津さんは2年間お母様を介護し、人間の「食べたい」「かみたい」という欲求はすごいと実感されました。寝たきりでほぼ意識のない状態でも、食べ物のことを話しかけると反応が返ってきたそうです。「母は歯が丈夫だったので、“かみたい”という気持ちが最後まで強く、口に入れたチューブをかみしめて離さなかったほど。でも口で食べられなくなった途端に自慢の歯がガタガタになり、かむことがいかに大切か思い知りました」。

要介護者の口を上手にケアするために
 食べることも話すこともできないお母様を介護する中、安藤さんが大切にしたのは日常的な口腔ケアでした。「何か目標がないとくじけてしまうので、歯みがきをしながら『食べられるようになったら、えびの天ぷら食べようね』など話しかけると、普段は意思表示できないのに、少し頷(うなず)いたり、首を振ったりしてくれたんですよ」。介護中の口腔ケアは、話しかけ触れあいながらコミュニケーションをとれる機会でもあります。お互いの気持ちを前向きにする効果も大きいようです。
 摂食機能の回復に取り組む歯科医師の植田耕一郎さんは、今までの医療では口の中の健康対策が後回しだったことを指摘。「せっかく身体は健康に戻っても、“口は寝たきり”という人が多かったんですね。再び食べられ、話せるためには口にもリハビリが必要で、口腔ケアは欠かせません」。
 ただ、年配になると健康な人でさえ歯のケアはおろそかになりがちで、寝たきりや認知症などの場合は本人が他人に口腔ケアをされるのを嫌がることが多いのも事実。これには「気持ちが通じ合うと、大きく口を開けて歯を見せてくれる」という安藤さんの言葉がヒントになりそうです。
 藤谷さんもリハビリの際に患者さんに拒絶されることもあるそうですが、「できないことにイライラするより、うまくいったことを“すごいですね!”と励ますこと」を心がけています。
「ご家族に認知症の方がいれば、その人が嬉しいと思うことを先取りするようにしてみては? 歯みがきや食事で口を開かなくても歌は歌う、散歩に出ると会話ができるとか、別の突破口が見つかるかも」というのは田中さん。
 大切なのは、症状が良くなることを介護する側も心から喜び、嬉しく思うこと。どんな状態でも、目の前の人が喜んでいる気持ちは必ず伝わるもので、さらに「口を尖らせた怒った顔では口は開かないし、ものも食べられないんですね。食べるためには笑うことが必要」とのことです。

自分のケアの充実が本当の介護予防に
 今の高齢者はいわば、歯みがきを大切にする習慣や意識がまだ定着していなかった世代。でも今、私たちがしっかりと歯と口の大切さを認識することで、必ず未来は変わると藤谷先生は訴えます。「健康なうちから自分のケアを充実させることが、本当の意味での介護予防だと思います」。確かに正しい意識や習慣を今から身につけておけば、介護をする側になっても、される側になっても、口に対して無防備ではいられなくなりそうです。「普段から家族が大きな口を開けて、歯を見せ合える信頼関係がとても大事」というのは安藤さん。大らかに笑いあい、口の中を注意しあえる関係は、もしもの介護生活でもあらゆる点で大きな助けになることでしょう。
 植田さんによると、どうやっても口を開かなかった患者さんが、ひとさじのミカンゼリーを差し出すと口を開けてくれたことがあるそうです。「それをきっかけに目を開き、表情が戻り言葉が出てくる…という変化が現れた。まさに“命のワンスプーン”です。口が元気になることは、全身が元気になる第一歩ではないでしょうか」。
 シンポジウムの最後は「食べる、しゃべる、笑うという、人間だけが持つ口の機能を十分に使って、人生を豊かにしていきましょう」という松田輝雄キャスターの言葉でしめくくられました。

上田教授の話
ロが果たす役割は予想以上に大きなもの
「同じ力ロリーでもチューブを通して栄養を摂る(経管療法)と、口で食べるのでは雲泥の差。病気で体重の落ちた患者さんが経管療法で太ることはほぼありませんが、食事を再開した途端に体重が増えることも。五感を使って口で食べることで、消化吸収の状態が格段に良くなるのです。
 口を使うことには未知数の可能性があります。要介護者の口腔ケアは、口の機能を回復するための大切なトレーニング。口の果たす役割をご家族が正しく知って、歯や舌の清掃に気を配るだけでも、介護状態は大きく改善されるでしょう。
 たとえ寝たきりでも、口を使うことをあきらめないでほしいと思います。
たった一口をきっかけに、身体の健康だけでなく、記憶や感情が蘇ることが少なくありません。口が持つパワーを信じて、自分の口、ご家族の口を大切にしてください」。

日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.19(2007/2)より 

---------------  Copyright(C) Laporte Dental Clinic  ---------------
 歯みがきで認知症を防ぐ
 介護が必要な高齢者に歯みが書を習慣づけることで認知症の進行を抑えられるのではないか?
今、その調査が全国の老人介護施設で行われています。
 これは高齢者に限った話ではなく、現在介護に携わっている人はもちろん、将来老人になるすべての人にとって身近な聞題。
調査を推進されている佐々木英忠先生(東北大学医学部教授)に、歯みがきの知られざる効果をお聞きしました。

口の反射機能に重要なサブスタンスPの減少が認知症の原因に

 「年齢とともに口の反射機能は低下していきます。介護が必要な、いわゆる寝たきりの高齢者には歯みがきの習慣をやめている方も多いのですが、それがいかに脳に悪い影響を与えるか、多くの人に知ってほしい」と佐々木先生はおっしゃいます。
 口の反射機能とは、健康な人なら無意識に行っているセンサーのようなもの、食べ物や唾液を感知して飲み込むんだり(嚥下反射)、気管に異物が入ったら、せきをして外に出す(せき反射)など口の正常な働きです。
「口のセンサーが正常に働かないというのは、何らかの脳血管性障害によって脳内のサブスタンスPという神経伝達物質が減っている状態。この物質はアルツハイマーを引き起こす、べータアミロイドタンパクを分解する働きがあるので、サブスタンスPが減るほど認知症になりやすいわけです」。
 実は、べータアミロイドタンパクという物質は若い人でも分泌されていますが、サブスタンスPによって瞬時に分解されるため通常は問題ありません。要はマイナスとなる物質をためすぎないよう、プラスに働く物質のバランスを正常に保つことが肝心なのです。
 サブスタンスPの合成に深く関わるのがドーパミンという、神経回路の司令塔のような物質。快感を得ると分泌されることでも知られています。「ドーパミンが少なくなると、サブスタンスPも減っていく。つまり日常生活の中での刺激がサブスタンスPをつくります。たとえ自力で動くことができない方でも、日常的に何か刺激を送り続けると脳は活性化するですよ」そこで、佐々木先生が着目したのが、歯みがき習慣でした。

口の刺激が脳を刺激。健康な歯を持つ人ほど長生きができる!?
 人間の脳が受ける刺激のうち、約40%は口が関係しているといわれます。栄養を摂り入れ、味覚を味わい、コミュニケーションを果たす口は、人問にとって大切な器官なのです。
 先生の考えは「口を刺激することは、脳を刺激する一番の近道」ということ。知覚の神経は口に集中しており、歯や歯ぐきを刺激すると脳の主要な部分に刺激が伝わることがわかっています。「まだ解明されていないことも多いのですが、口腔ケアには未知数の可能性があると思います。」とのことです。
 たとえば、サブスタンスPを上昇させる薬剤もありますが、薬による身体への負担や出費と比べると、歯みがきは、すぐに始められる手軽な方法。認知症の介護は大変なので、歯みがきで少しでも症状の進行を防げれば、介護する負担の軽減につながります。「ぜひ介護する方もそれを頭に入れておいてください。朝昼晩と毎日続けることが大切なんです」。
 老人科でさまざまな症状を診てこられた佐々木先生が指摘されるのは、高齢になっても元気な方に見られる共通点、それは歯の健康状態と寿命との因果関係です。
「歯の本数が残っていて、かみ合わせのよい人は大抵長生きですよ。歯のない人に比べて食べ物を制限されないこともありますが、しっかりかむことで脳への刺激が衰えないからではないでしょうか」。

脳疾患が原因の多<の老人痛を予防する歯みがき習慣のパワー
 佐々木先生が口腔ケアを研究されたきっかけは、ある高齢の肺炎の患者さんでした。「その患者さんの口の中を覗くと、喉に漬物がひっかかっていました。でも、本人は、まったく気づいていない。口の中の感覚が鈍感になっていたんですね」。
高齢者の最大の死因になる老人性肺炎は、このように口のセンサーが低下し、口の中の細菌がそのまま気管に入ることで起こります。
 10年前にサブスタンスPの減少が口の反射機能を低下させることに注目した先生は、「口腔ケアで、肺炎は防げるのではないか?」と、要介護老人の歯のケアと肺炎のつながりを調べる調査を行いました。その結果、食後に5〜10分の歯みがきを2年問続けた高齢者は、肺炎の発生率が40%も減少したのです。その際の副産物として、歯みがきが認知症状にも効果があることがわかってきました。
 麻痺など具体的な症状がなくても、65歳以上になると約半数の方に脳血管性障害があると言われています。元気な方でも以前より怒りっぽくなったり、イライラする傾向があれば要注意だとか。特に大脳のより深部に障害がある場合は、約30%の人が2年以内に肺炎になるというデータもあるのです。
 「たとえば、コレステロールを抑えるために食事制限をするなど、健康を維持する方法は、いろいろあります。しかし、長く続けないと意味がない。その点、歯みがきは、特別なことではなく、日常生活の一部となっている行為だから、続けやすいでしょう。
 さらに、歯みがきは激しい運動に比べて、小さな労力で、より効果的に脳を活性化できます。取り組みやすく、続けやすい健康法だと思いますよ」
 現在、介護が必要なご家族を抱える方もそうでない方も、日頃の歯のケアの大切さを認識しておきたいものです。
        
佐々木英忠(ささきひでただ)
昭和16年秋田県出身。東北大学医学部第一内科大学院を卒業。同大学医学部第一内科を経て、同大学附属病院老人科教授に就任。
老年・呼吸器病態学の研究に携わり、老人を専門に診療する老年科の必要性を説き実践にあたる。現在、東北夫学大学院医学研究科教授。日本老年医学会理事長をはじめ、多くの学会理事、評議員を務める。

日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.13(2004/1)より 

---------------  Copyright(C) Laporte Dental Clinic  ---------------
 顔学でみる歯と顔のいい関係
 100万年以上かけて進化してきた現代人の顔
 実は、この50年間で、日本人の顔は驚くほど変わったといわれます。今顔に何が起きているのか、どうすればいい顔になれるのか、人間顔を総合的に研究する日本顔学会の理事である東京大学教授・原島博先生に歯と口の役割と顔との関係についてお聞きしました。

日本人のあごが危ない! 小顔の未来にある深刻な歯のダメージ
 男女を問わず現代人が理想とするのは小顔。人気アイドルはもちろん、今の若者を見ると一昔前より明らかに顔が小さくなったようです。とはいえ、右の逆三角形の顔(現在の顔の変化がそのまま進んだら…?と想定して、国立科学博物館人類研究部長の馬場悠男氏が骨格を予測(原鳥先生が顔部分をコンピュータで肉づけしたもの)は少し不気味ではないでしょうか?実際に100年後の顔がこうなるということではなく、今、日本人の顔がいかに激しく変化しているかを知るためのシミュレーションなんです。原島先生は特に顔の下半分が相対的に小さくなったことを指摘されています。その原因は戦後、日本人の食生活が一気に変化したこと。ハンバーグやパスタなど、かまずに飲み込んでも大丈夫なくらいやわらかいメニューが増え、食事時問も短くなったために、かむ回数は激減しました。下あごを動かす咀嚼筋が発達しないとあごは小さくなり、さらに歯を支える歯槽骨も退化します。歯の大きさは変わらないので歯並びは悪くなり、必要な歯が生えてこない場合も。咀嚼能力が低下すれば基本的な消化吸収に支障をきたし、不健康な状態といえるでしよう。欧米人の場合は、何世紀もかけて今の小さな顔に進化してきました。日本人が今経験しているのは数十年で数百年分の変化。色々な歪みが出るのは当然で、このままでは歯のトラブルを避けられません」とのこと。原島先生が理事を務める日本顔学会は様々な職業の会員の方がおられますが、一番多いのが歯医者さんだとか。それだけ顔と歯は密接な関わりがあります。

なぜ口が大切か?人間の遣化がもたらした口の新しい役割
 顔と歯の関係は、顔が進化してきた歴史をたどると様々なことがわかります。まず顔の中で最初にできたのが口。その周りに鼻、目、耳ができ、それら感覚器官が集めた情報を処理するために脳ができました。
 そもそも動物の口は食べ物にかみつきやすいよう、顔の前に飛び出しているのが特徴。また相手にかみついて攻撃する道具でもあったので、口自体が武器になるほど硬かったのです。しかし直立歩行を始めた人問は、食事や攻撃に手を使うようになります。人間の口は奥へと引っ込み、口周辺はやわらかく変化。口の周りを自由に動かせることで人問の顔には表情が生まれ、のどを使って多様な声を発することで言葉が生まれました。人間にとって口は食べるためだけでなく、コミュニケーションの器官にもなったわけです。
 あごが小さくなる弊害は身体面だけにとどまりません。口は考えや気持ちを伝えあう上でも重要な働きがあり、かむことは表現力や思考力の成長と大いに関係があります。つまり口の退化は、コミュニケーション能力の退化を意味するのです。
子供と大人の顔の違いは顔の上半分と下半分のバランス。上半分は子供時代とそう変わらず、大人の顔は下半分(鼻から下)が大きくなっています。大人になることは、顔の下半分が発達すること。現代人はその力が弱まっているといえます」と原島先生。現代の小顔信仰は、社会全体が幼児化している象徴といえるかもしれません。

身休と心のあリ方で顔は変えられる。いい顔をめざそう!
 可愛らしさや優しさが求められる今の風潮が現代人の顔に反映されるように、顔は時代背景や生活環境、職業、考え方などによって驚くほど変わります。変えられるなら「いい顔」になりたいもの。原島先生が提唱される「いい顔になるための13ヵ条」のべースには、次のような顔の哲学があります。
 いい人だなあと感じればその人がいい顔に見えてきます。顔は見る人と、見られる人との関係の中に存在し、そして人から人へと伝わるもの。だから自分がいい顔になることは、人もいい顔にすることなります。」また原島先生はメディアが発信する顔のトレンドにあまり惑わされてはいけない、と注意されています。TVの中の顔には自分との関係性がなく、人と人の間に本来つくられる顔のあり方は成立しません。一方的な情報を意識しすぎると自分の顔の個性が失われ、世の中は同じような顔であふれてしまいます。
 いい顔の解釈は様々ですが、少なくとも量産できるクローン人問のような顔ではないはず。生き生きした顔とは「人間らしい顔」であり、人間だけが持つ口の役割は決して軽視できません。いい顔になるには、いい歯から。しっかりかむことは身体と心を豊かにする必須条件です。未来の日本人が冒頭の顔にならないよう、歯と口の健康を守ることは私たち現代人に課せられた使命といえるでしよう。

【 いい顔になるための顔訓 13カ条 】
@自分の顔を好きになろう
A顔は見られることによって美しくなる
B顔はほめられることによって美しくなる
C人と違う顔の特徴は、自分の個性(チャームポイント)だと思おう
Dコンプレックスは自分が気にしなければ他人も気づかない
E眉間にシワを寄せると、胃にも同じシワができる
F目と目の間を離そう、そうすれば人生の視界も広がる
G口と歯をきれいにして、心おきなく笑おう
H左右対称の表情づくりに心がけよう
I美しいシワを人生の誇りにしよう、美しいハゲを人生の誇りにしよう
J人生の3分の1は眠り。寝る前にいい顔をしよう
K楽しい顔をしていると、心も楽しくなる
Lいい顔、悪い顔は人から人へ伝わっていく

        

原島博(はらしまひろし)
1945年東京都出身。東京大学工学部卒業後、同大学院博士課程修了、工学博士。現在、東京大学大学院情報学環長、工学部教授を兼務。コミュニケ」ンヨンエ学の研究で知られる。95年日本顔学会を設立、現在は理事として「顔学」の構築と体系化に尽力する。99年、上野で開催された「大顔展」の企画を担当した。
日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.12(2003/7)より 

---------------  Copyright(C) Laporte Dental Clinic  ---------------
口臭を気にしすぎる人が増えている。
 最近、自分の口臭が「気になる」という人が増えています。
なかには、気にしすぎて人とのコミュニケーションが上手にいかず、生活にも支障が出る人も少なくないようです。
しかし実際は、“本人だけが気にしている”と言うケースがほとんど。人は生きている限り、無臭ではありません。たとえ本当に口臭があったとしても、 原因がわかれば、そのほとんどは解消できます。今回は、東京医科歯科大学大学院の教授・川口陽子先生に口臭の原因と予防・解消法についてお話をうかがいました。

悩むよりもまず、口臭に関する正しい知識を持ちましょう。
 人とのコミュニケーションは社会生活を送る上での重要な要素です。ところが、口臭を気にするあまり、つい顔をうつむきがちにして話してしまい、その自信なげな態度が相手に悪い印象を与えてしまったり、ある人が「口が臭い」と何気なく言った一言で、人前で話すことが恐怖になってしまう…。このような不安な心の状態を「口臭ノイローゼ」と言います。近年の清潔志向の高まりを反映してか、こうした悩みを抱えている人が増加しています。
 しかし実際のところは、人に不快感を与えるほどの臭いはなく、本人だけが気にしているといったケースが多いようです。実際に口臭がある場合には必す原因があり、その原因を解決することで、口臭は解消できます。口臭で悩む前にまず、口臭に関する正しい知識を持ちましよう。

口臭の原因は9割以上が口の中に。
 最近の研究では、口臭発生の約9割は口の中に原因があることがわかってきました。川口陽子先生によると「口の中には何百億という細菌が存在しています。これらの細菌が食べかすなどを分解する際に口臭のもととなる臭気成分が作り出されます」とのこと。主な臭気成分は、メチルカプタン、硫化水素、ジメチルサルファイドという3つの揮発性硫化物です。これは下水などの悪臭の原因と同じガスですが、心配はありません。きちんと口の中のケアを行えば、その発生を予防することができます。
 では、口臭の原因とその解消法について川口先生に聞いてみましよう。

生理的口臭

 「まず、起床時や空腹・疲労時、緊張した時などに感じる口臭を生理的口臭といいます。特に起床時には強い口臭を感じる人も多いでしょう。これは寝ている間、唾液の分泌が少なくなって細菌が増殖し、口の中が汚れるから口臭レベルが高まるのです」。
 しかし、こうした一時的な口臭は歯みがきやうがいなどで解消できるもの。「生理的口臭は健康な人でも起こる正常な反応であり、気にしすぎる必要はありません」と川口先生は強調されます。

病的口臭

 治療の必要がある疾患や機能低下、改善すべき原因があるものを病的口臭と言います。

(1)舌苔(ぜったい)
 なかでも、口臭の最大のげんいんと考えられているのが舌苔です舌苔とは新陳代謝によって脱落した粘膜細胞や白血球などの血球成分が舌についたもので細菌によって分解されると悪自が発生します。「舌苔が付着やすいのは、舌の奥の部分ですこの部位をやわらかい歯ブラシや舌ブラシでそっとみがきましょう。ただし味蕾を傷つけないため強くみがきすぎないように注意してください」。(図参照)
*粘膜細胞-粘膜の表面にある皮の部

(2)歯周病・むし歯
 歯周病やむし歯も口臭の原因となります。まず、口の中の清掃が不十分だと歯垢がたまり、酸素供給のない歯垢層の深部に嫌気性菌が増殖します。
この嫌気性菌が歯周病を進行させ、さらに破壊された組織や血球成分などのたんぱく質成分を分解し、悪臭を作り出すのです。
 むし歯の場合、深い大きなむし歯があったり、多数のむし歯があると口臭の原因になります。
「歯周病やむし歯が原因の場合、歯科医院での治療と、毎日のケアをしっかり行うことが大切です」。

(3)唾液分泌の減少
 唾液には、口の中を洗浄・殺菌する働きがあります。ですから、唾液が減少すると口の中が汚れ、口臭が強くなります。年を重ねると口臭が強くなってくるのは、唾液量が減少するからです。また食事を抜いたり、抗圧剤などの薬の副作用で唾液の量が減ることもあります。
 口が渇いていると感じた時は、うがいをしたり、お茶を飲んだり、また、舌や口を意識的に動かして、唾液の分泌を促してみるのも良いでしょう。

心因的口臭

 生理的な口臭以外は認められないのに、気にしすぎて人と話さないことで口臭が悪化する場合があります。これを心因性口臭といいますが、解決法は、なによりもまず気にしすぎないことです。それでも気になる人は、歯科医院で口臭の検査をしてもらうことです。

セルフケアと歯科健診で口臭を予防する。
 最近、子どもの口臭について歯科医院を訪れる人が増えているようです。しかし川口先生は「新陳代謝が激しい子どもは、熱を出したときなどに一時的に口臭が強くなることがありますが、心配することはありません」とおっしゃいます。ただし、口臭の原因となる歯肉炎やむし歯にならないよう、日頃から口の中の健康に注意してあげることが大切です。「乳歯、永久歯とも生えてから1〜2年は特にむし歯になりやすいので注意が必要です。歯を丈夫にする作用のあるフッ素を利用するのもむし歯予防には特に効果的です」。
 大人だけでなく、子どもの口臭まで気にするようになった現代。しかし、一時的な口臭は誰にもみられます。きちんと予防を行えば口臭について悩む必要はありません。「歯と口の健康を守ることで、ほとんどの口臭は予防できるもの。それには、セルフケアだけでなく、歯科医院での定期健診を受けることも大切です」と川口先生はアドバイスしてくれました。

川口陽子(かわぐちようこ)
●東京医科歯科大学歯学部卒業。現在、東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野教授。口腔疾患の予防・疫学、歯科保健医療システム、オーラルヘルスプロモーション、国際歯科保健について主に研究を進めている。

日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.9(2002/2)より 

---------------  Copyright(C) Laporte Dental Clinic  ---------------
 ものをよくかまない若者たちが「キレる。」
 自分で自分の感情をコントロールできずに「キレる」子供たちが社会問題となっています。
未成年による凶悪事件が世間を騒がすなど、問題は深刻です。このキレる原因のひとつは、食生活にあるという専門家もいます。
そこで今回は、日頃より脳の発達の見地から現在の子育てに警鐘を発し、また、本誌「朝昼晩」のコラム「大島教授のちょっと気になる脳と歯のハナシ」にも寄稿いただいている、京都大学名誉教授の大島清先生にお話をおうかがいしました。

紳経細胞がネットワークを広げて脳は発達する。
 人間の赤ちやんが誕生した時の脳の重さは約400グラム。それが1歳で倍の800グラム、3歳で1000グラムと急速に発達し、成人になる頃には約1400グラムとなります。赤ちやんの脳には、およそ1000億個の神経細胞があります。しかし脳の神経細胞は身体の他の部分の細胞と異なり、生後、減ることはあっても増えることはありません。それでは、脳はどのようにして発達していくのでしょうか。
 大島清先生によると、「脳に何か情報(刺激)が入ってくると、神経細胞にシナプス(結合部)の芽が生えてきます。その芽に向けてほかの神経細胞の神経繊維が伸びてきて、神経細胞同士がくっつきます。脳が発達するということは、神経細胞同士がくつっいてネットワークが広がっていくことを言います」とのこと。つまり、脳にさまざまな刺激を与えることによって、脳は発達していくのです。
【 食が人間の心をつくる構図 】
かむ
あごの動きを
通じた脳への刺激
かむことで得られる脳へ
の刺激は、身体全体で得
る刺激の50%にも達する
味わう
味・におい・歯触り
など口の中の感覚を
通じた脳への刺激
旬を味わい季節や自然
を感じることで、自然への
関心や畏敬の念を抱く。
家族との
食事
会話・しつけ
家族でテーブルを囲み会話
をしながらゆっくりと食
事を楽しむことで他者と
のつながりを感じる

脳のソフトウェアの発達が未熟な子供たちがキレる。
 脳の発達を考える時に最も大切なのは、前頭連合野と呼ばれる脳のソフトウェアにあたる部分を十分に発達させることです。
 「脳のソフトウェアとは、人間らしい行動をとらせるための司令塔です。人間は本能ではなく、ソフトウェアでものを考え、計画を立て、判断し、行動します。子供たちがキレるのは、このソフトウェアの発達が未熟であるから。頭にきた時に感情をコントロールできないからキレるし、計画的な思考ができないからキレた時に相手を簡単に傷つけてしまうのです」。
 では、どのようにすればソフトウェアは健全に発達するのでしょうか。それは、ソフトウェアがほぼ完成する10歳ぐらいまでに、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感を存分に使った体験をさせることです。五感を介した刺激は情報となって前頭連合野に送られ、ソフトウェアに組み込まれます。
 ところが今の子供たちはどうでしょうか。多くの子供たちはテレビやゲームなど、視覚や聴覚だけを刺激する遊びに夢中です。そして、その遊びの場は室内が中心です。
脳の発達のしくみ 生まれてから3歳まで、脳が猛スピードで
発達する間は、まずハードウェアがしっかりと作られる。
3歳を過ぎると今度は脳のソフトウェアができはじめる。
そして10歳頃にはソフトウェアの「配線」はほぼ完成する。
「自然の中に身を置き、実際に手や足を使って遊ばせることが、バランスのとれた五感刺激を与えることにつながります。自然体験を通してこそ、子供たちは新しいことを発見し、考え、工夫します。そして、そうした過程をたどることで脳のソフトウェアが磨かれて、すばらしい個性がつくられるのです」。さらに大島先生は「そのためにも、親が積極的に子供といっしょになって自然に触れて欲しいものです」と親の参加を促されます。
 つまり、子供が五感を使ってさまざまなことを体験するための環境づくりは、親の責任であるとも言えるからです。

食事が子供の脳を育てる。
 脳に与えられる情報には、五感刺激のほかに運動刺激があります。運動刺激とは、触れたり身体を動かすことによって得るもの。この運動刺激のうち、脳は50%という最も多くの情報をアゴから受けています。
 「私たちの祖先である」猿人の脳は、ある時期を境に飛躍的に成長を遂げました。これは、かみちぎって飲み込むだけの食事から、火で調理した物をアゴを使ってしっかり咀嚼する食事へと変化したからだと考えられます。その後、言葉を話すようになって脳はさらに発達していきました。きちんとした言葉を話すことはソフトウェアづくりの基本となる大切なものですが、実は言葉を話すために必要な脳進化の基礎をつくり上げたのは咀嚼だったのです」。
 人類の進化の歴史からも、アゴを使う=よくかむことは、脳の発達に大きな影響を与えることが分かります。ところが、よくかんで食べる習慣は、大人になってからでは身につきません。子供の頃にしっかりと習慣づけておくことが大切なのです。
 「アゴからの情報だけでなく、食事をする時に目で楽しみ、においをかぎ、舌で味わうことによっても脳は刺激されます。このように食事は、子供の脳を育てるのに重要な役割を果たすものなのです。だからこそ、毎日の食事をおろそかにしてはいけません。食事を作る人は、多様な味、食感のもの、旬の素材をかみごたえのある大きさ・固さで食べさせるように心掛けてほしい。そして、何よりも家族揃って食事をすることが基本です。
 会話を楽しみながら、ゆっくり時間をかけてよくかんで食事をしてこそ“おいしい”と感じるし、脳は刺激を受けるのです」。
 子供たちの脳を健全に育てるために、今一度ご家庭の食事を見直してみませんか。


大島清(おおしまきよし)
1927年広島県生まれ。東京大学医学部卒。ワシントン大学助教授、京都大学霊長類研究所教授を経て、現在、京都大学名誉教授、愛知工業大学客員教授。専門は大脳生理学。執筆、取材、講議、講演などにエネルギッシュな活動を続ける。「子ともが伸びる脳の育て方」「立ち止まれ、その子育て」「子洪の脳カは9歳までの育て方で決まる」など、脳の発達の見地から子育てに関する著書も多く記している。
日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.7(2001/2)より 

---------------  Copyright(C) Laporte Dental Clinic  ---------------
 200X年。宇宙旅行者のための基礎知識
 地球から宇宙へとロケットが飛び立って約70年、ガガーリンの有人宇宙飛行から約40年。宇宙に行った人の数は全世界で400名を超え、今や一般人の宇宙旅行も決して夢ではなくなりました。数年後には、宇宙への観光ツアーが実現すると言われています。もし実現したらぜひ行ってみたいけれど、未知なる宇宙に対する不安もいろいろ。そこで今回、宇宙では歯と身体にどんな変化が起こるのか、宇宙開発事業団の航空宇宙医師、嶋田和人先生にお話をお伺いしました。

無重力空聞では、身体に多くの変化が起こリ、スタイルも変わる
 普段、特別に意識していませんが、私たちは重力のある世界で暮らしています。そして身体も、重力のある世界に適応するように調節されています。したがって、無重力空間(宇宙船内は完全な無重力ではなく、ごく小さな重力があります)である宇宙に行くと、身体にはさまざまな変化が起こるのです。
 そのひとつが、「フルイド・シフト」と呼ばれる体液の移動です。航空宇宙医師の嶋田先生によると、「重力の影響がなくなると、血液をはじめとする体液は下半身から上半身へと移動していきます。その結果、顔は満月のように丸くなり、脚は鳥のように細くなるのです。顔のむくみは2〜3日でとれますが、脚は宇宙にいる限りそのまま」とのこと。
 また、無重力空間ではスタイルも変化します。たとえば、骨と骨の間が開いて身長が伸びてしまったり、内臓やお腹の肉が上に持ち上がってウエストが細くなったり。さらには、胸が厚くなったり、おしりがヒップアップしたりすることもあるようです。重力が変化することで、姿形まで変わってしまうとは驚きですね。

良くかんで食事すれば歯槽骨からのカルシュウムの流出をストップ
 骨粗髭症と同じように、骨からカルシウムが溶け出し、骨がもろくなるという症状も起こります。正常な骨は古い骨の組織の溶解、新しい骨の再年を繰り返していますが、無重力空間では再生される速度が遅くなるのです。
 「個人差がありますが、カルシウムは1か月で3%、1年間で15%ぐらい減ります。背骨や踵など地上で体重を支えていた部分からの流出が多く、無重力空間では骨に刺激が与えられないことが原因と考えられていますが、はっきりとした原因と対処法は研究中です」(嶋田先生)。
 歯を支える歯槽骨からも同じようにカルシウムが流出することが考えられますが、1年間宇宙に滞在していた人も歯に問題はなかったそうです。歯槽骨の場合、「他の骨より代謝が遅く、食べ物をかむことによって刺激を受けているため、流出が抑えられているのではないでしょうか」とのこと。
 初期の宇宙食は、チューブ食など柔らかいものが多かったのですが、現在は、ステーキや生の果物など歯ごたえのあるメニューも数多くあります。やはり、地上でも宇宙空間でも、しっかりかむことは、身体に良い影響を与えてくれるようです。
 また、宇宙では味覚が変わるとも言われています。日本初の女性宇宙飛行士の向井千秋さんも、「地上で試食した時よりも、料理の味が薄く感じました。濃い味のもの、塩分の多いもの、甘いドリンクなどがおいしかった」と語っています。ただ、これは、味覚を感知する舌の味蕾が無重力の影響を受けているのか、環境が変わることによってそう感じているだけなのか、まだ解明されていないということです。

歯を磨いた後の水はどうやって捨てる?
 それでは、何でもぷかぷか浮いてしまう無重力空間の中で、歯みがきはどのようにして行うのでしょうか。これは意外なことに、一般に市販されている歯ブラシと歯みがき粉を使っているそうです。NASAが開発した、泡が立たず、ゆすがなくても良い歯みがき粉もありますが、ねばねばした物は扱いやすいので、一般の市販品でもまったく問題はありません。
問題になるのは、口をゆすいだ後の水の捨て方。無重力空間では、水も落ちずに漂います。その水玉が機械にでも入ってしまえば、大問題を起こしかねません。向井さんも、初フライトの時は困ったそうです。
 「飲み込んでしまう人が多いようですが、私は磨いた後の水を飲み込むことに抵抗があったので、タオルに向かって吐き出すことにしました。ところが、叶き出す勢いが強すぎても弱すぎても、水玉が浮遊してしまいます。考えた末、ティッシュペーパーを口の中に入れて水を吸い取るようにしました」とのこと。
 地上では当たり前のようにしている動作も、宇宙では工夫が必要となるのです。

むし歯があっても治療済みなら宇宙飛行士になれる
 これまでの宇宙飛行の歴史の中で、歯のトラブルが問題になったことはありません。しかしそれも、宇宙飛行士の採用条件の中に、歯に対する医学基準が設けられているからです。
 といっても、その合格基準は、それほど厳しいものではありません。むし歯や歯周病もきちんと治療されていれば良く、義歯も外れなければ、歯に関しての基準はクリアできます。「歯の神経や、歯の根の周りに炎症があると、船内の圧力を下げた時などに痛みが起こることがあります。また、痛くて作業ができなかったり、食事がきちんととれないようでは困るので、きちんと治療しておかなければなりません」(嶋田先生)。
 採用後は1年に1度健康診断を行い、その際にデンタルケアの指導も行われますが、基本的なブラッシングの仕方など、ごく一般的な指導を行っているそうです。「宇宙飛行士を目指す人は、健康に対する意識が高く、デンタルケアもきちんと行っているので、特別な指導をする必要もないんですよ」。
 どうやら、宇宙空間に行っても、デンタルケアの習慣が正しく身についていて、良くかんで食事ができれば、歯については心配しなくても大丈夫なようです。
 将来は、宇宙旅行どころか、他の惑星への移住も、もはや夢の話ではありません。でも、まだまだ謎が多い宇宙空間では、歯にトラブルを抱えていれば、思わぬ症状に脳まされるかも。その時になってあわてないよう、今から歯の健康について、しっかり考えておきたいものです。

嶋田和人(しまだかずひと)
オハイオ州のラィト州立大学で学び、エァロスペースメディシンの専門医認定を受ける。宇宙開発事業団の宇宙医学研究開発室に所属。宇宙飛行士の選抜、定期検診、訓練中および飛行前・中・後の健康管理のほか、宇宙飛行に伴う身体変化の対策法の研究等を行う。

向井千秋(むかいちあき)慶鷹義塾大学にて医学博士号取得、心臓血管外科専門。1985年、宇宙開発事業団により、搭乗科学技術者候補者として選定される。94年、98年にスペースシャトルに搭乗。二度の宇宙飛行を行う。
[参考文献]---向井千秋の宇宙と体のおもしろい関係---NHK出版編自本放送出版協会/1995
日本歯科医師会デンタルマガジン 朝昼晩 Vol.9(2000/7)より 


---------------  Copyright(C) Laporte Dental Clinic  ---------------

 「歯磨き習慣」に関する市場調査
 口腔疾患を予防する上で「歯磨き」は重要です。では、最も効果的な「歯磨き」とはどんな歯磨きでしょう。回数は?実行する時間帯は、朝?それとも夜?(財)サンスター歯科保健振興財団では、歯磨き回数や歯磨きの時間帯が、歯の清掃状態や歯肉の改善にどの程度関与しているのか、継続的な産業歯科予防健診を通して分析し、興味深い知見を得ることができました。

歯磨きするなら「朝」より「夜」、「夕食後」より「就寝前」に
 調査対象は平成13年度に歯科健診を1回受診した21,595名で、男性13,557名と女性8,038名。そのうち歯磨さをしない人は4名。時々歯磨きをする人は138名。残り21,453名は1日1回以上歯磨きをしており、これら1日1回以上歯磨きをする人の回数別割合は(図1)のようになっています。
今回の調査では、1日1回以上歯磨きをする人に、いつ磨くのかを尋ね、回数と時間帯の違いが、歯の清掃状態と歯肉の状態にどう関係するのかを集計しました
 その結果、明確になったポイントは2つあります。まず第1番目は、1日の歯磨き回数3回の群が最も清掃状態が良好であったこと。これは、当然の結果といえますが、興味を引くのは第2番目のポイントです。
 歯磨きを1日1回する群、2回する群、3回する群、どの群でも、「夜寝る前」に歯磨さをする群が「夕食後」に歯磨きする群より、清掃状態がわずかながら良好な傾向が見受けられたことです。清掃状態が最も良好であったのは、1日3回、朝食後、昼食後、夜寝る前に歯磨きを行う群で、73.2%が清掃状態良好の結果を得ています。

歯肉の健康状態についても、ほぼ同じ結果でした。
 患者さまへの歯磨き指導の際、夜の歯磨き提案はもう常識ですが、このデータから見ると、さらに「夕食後」より「夜寝る前」の習慣をおすすめしたほうがよさそうです。

継続はカなり
 歯科健診受診者1,154名を対象に、年1度、4年間の継続調査で、歯磨きを継続する、しない、でどんな違いが出るかも調べてみました。やはり、歯磨き回数を減らすと、40.0%の人にCPI(communityPeriodontalIndex)コードの増加が見られます。興味深いのは、歯磨き習慣を夜寝る前に増やした群では65.6%に歯肉状態の維持・改善が見られたのに対し、夜寝る前の歯磨きを減らした群では42.5%にCPIコードの増加が見られたことです(図4)。ここでも、夜寝る前の歯磨き習慣の大切さがうかがえます。

就寂前だからこそ
 就寝前という、ブラッシングに関して比較的時間のとれる時だからこそ、患者さまの口腔内の状態にあわせて、いろんなオーラルケアの商品をご使用されてはいかがでしょうか。

---------------  Copyright(C) Laporte Dental Clinic  ---------------


 古代エジプトにもあった・・・“歯磨き”と“歯磨き剤”の謎
人はなぜ歯を磨かなければならないのか?
 ズバリそれは歯の健康維持のため。歯を失って一番辛いのは、好きなものを自由に食べられないと言うこと。とくに高齢になればなるほど、食べることが楽しみになってくる。ところが、現在の日本人では、成人で28本ある歯が、60歳を過ぎればその約半分に減っている。
 そこで今「8020(ハチマルニイマル)運動」が推進されているのです。「8020」とは80歳になったときに、20本の健康な歯を残そうということです。やはり自分の歯でものを食べられるのが一番。そのためにも悪いところがあれば早く治療して、正しい歯のみがき方を週間づけることが大切ですね。
 日野市で行われている「8020表彰」では20本どころかほとんどの歯が残っている高齢者の方が毎年数名表彰されます。その方たちは半年に一度定期的に検診をしています。年をとっても歯を残すことは十分可能なのです。さらに歯が悪くなって失うのは、食べる楽しみだけではない。歯以外の健康まで損なわれてしまう。「40歳台の約80%もの人が歯槽膿漏になっているんです。これは歯ぐきに炎症を起こし、口臭の原因を作りやがては歯が抜けてしまう恐ろしい病気です。当然ものを噛む力も弱まるので消化器官にも負担がかかってしまうのです。
 さてこのように大切な「歯磨き」だが、文明が進むにつれて食習慣が変わり、むし歯や歯槽膿漏が増えてきている。実際厳しい自然環境の中で暮らしたネアンデルタール人にはむし歯がなかった、という報告もある。道具を用いて歯を磨いた例だと、紀元前5〜6世紀のインドで、宗教的意味合いで木の棒を使って、歯を磨いたとされている。これは歯木と呼ばれるもので、端を噛んでほぐし歯ブラシにしたもの。また古代エジプトでは、ビロー樹や火打石の粉、緑粘土、密などを混ぜて歯磨き剤として使ったという。その後、ギリシャやローマ、中国など中世にいたるまで動物の骨や角を焼いた炭や灰(リン酸カルシウム)を原料にしたものを使っていたとか。
 ちなみに日本に歯磨き剤が登場したのは江戸時代。貝殻をすりつぶした炭酸カルシウムが主成分だった。さらに、先の歯木が進化したものとして江戸時代、大流行したのが房楊枝。先端が房状になった楊枝で、神社や寺の境内で売られ爪楊枝と共に庶民の間でブームになったという。このブームで男女の楊枝を使う姿が浮世絵で描かれ、今も残っているのだ。


---------------  Copyright(C) Laporte Dental Clinic  ---------------